疾患詳細
椎体骨折・椎体脱臼Vertebral fractures and luxations
概要
椎体(背骨)の骨折や脱臼は、多くは高所からの落下事故や交通事故などによる外傷性が要因となります。腫瘍性や感染性・炎症性などによっても引き起こされるケースがありますが、ここでは外傷性の椎体骨折・椎体脱臼について解説します。椎体脱臼や骨折が起こった場合、多くの症例では生命維持に関わる損傷した臓器(内臓)に対する治療が優先されます。ただし、椎体骨折や椎体脱臼自体は、脊髄機能障害だけでなく、重度の疼痛が引き起こされる為、損傷した臓器ケアが十分な場合には、椎体骨折や椎体脱臼の外科手術による整復が望まれます。
病因
椎体(背骨)の骨折や脱臼は、多くは高所からの落下事故や交通事故などによる外傷性が要因となります。それ以外で骨折や脱臼を引き起こす要因としては、元々の椎体不安性を背景とするケースや、腫瘍性疾患や感染症などによる強度低下での病的骨折で2次的に引き起こされるケースもあります。2次的要因については、原因に対する治療が必要となりますが、ここでは外傷性による椎体骨折・脱臼に対する対応にフォーカスします。外傷性の場合には、外傷の状況次第で、椎体のどの部位でも発生する可能性がありますが、特に胸腰椎接合部や、腰仙椎接合部で起きやすいと云われています。
症状
外傷性の場合には、非常に強い疼痛症状が認められます。また椎体骨折や変位によって、強い痛みと共に不全麻痺〜完全麻痺が引き起こされます。重症度(グレード分類/胸腰部椎間板ヘルニア・頚部椎間板ヘルニアをご参照下さい)によっては、膀胱麻痺や痛覚の消失に至るケースもあり、事故などの場合には、ショック症状が引き起こされるケースもあります。同時に、椎体骨折や椎体脱臼は、椎体以外の損傷の評価が大変重要となります。挫傷性肺損傷など胸部の問題、肝臓や腎臓、尿管、膀胱などの腹部の問題がある場合、より生命維持に優先順位の高い問題点の治療と状態安定化が最優先となります。
診断
神経学的検査による重症度評価と併せて、外傷部位、胸部および腹部レントゲン、胸腹部エコー検査による全身状態の把握が最優先で実施されます。先に記載した通り、生命維持に対して優先度を速やかに決定する必要があり、椎体骨折や椎体脱臼に対する治療は、あくまでも「胸腹部臓器の全身状態が安定している」ことが最も重要です。椎体骨折や脱臼が起きた場合、CTでは椎体骨折や脱臼の骨折形状や椎体同士の位置関係の正確な情報把握が可能であり、MRIでは椎体骨折や脱臼の結果、脊髄障害がどの程度引き起こされているかの把握が可能です(図)。
下の実際の症例では、レントゲンでも椎体脱臼は確認されますが、CTやMRIを用いるとより詳細な脊髄自体のダメージの状況や微細な骨折の有無が明らかになることがわかります。これらの情報は、どのように外科治療を実施するかの計画や、どの程度後遺症が残る可能性があるかなどの予測を立てる上で、非常に重要な情報となります。
治療と予後
外傷性による椎体骨折・椎体脱臼は脊髄圧迫による疼痛緩和を目的とした外科治療、変位が僅かな場合にはコルセット装着など、個々の状態に合わせて対応が決められます。当センターでは椎体のズレが重度の場合や、外科手術での整復が疼痛緩和に繋がると考えられる場合には、外科治療をお勧めしています。治療予後は、あくまでも外科手術は椎体位置関係の改善による強い疼痛症状を緩和する事が目的となるため、「受傷時点での脊髄障害の程度」に依存します。受傷時点で重度の脊髄障害がある場合、神経学的異常(後遺症)が残る可能性があります。
- 椎体骨折・椎体脱臼にあてはまる症状
- ● 強い痛み
- ● 足が動きにくい、動かせない
- ● 尿が垂れ流しの状態になってしまう
- ● 意識障害