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水和髄核逸脱症(HNPE)Hydrated nucleus pulposus extrusion(HNPE)

概要

水和髄核脱出(HNPE)とは、一般的なハンセンI型やハンセンII型に分類されるタイプとは異なり、ほぼ変性していない椎間板髄核が突然脱出することによって、症状が引き起こされます。脱出する物質は液状からゼラチン質であるため、MRIで脊柱管内に水和した(液状物様の)硬膜外物質が脱出した特徴的な画像が描出されます。多くは頚部で発生しますが、ごく稀に胸腰部でも認められます。頚部で発症した場合は、急性発症での四肢不全麻痺、胸腰部で発症した場合には後肢不全麻痺もしくは後肢麻痺が引き起こされます。ここでは、HNPEの概要についてご説明します。

病因

HNPEは、一般的に多いとされる軟骨異栄養性犬種以外の、非軟骨異栄養性犬種でも発生が報告されています。通常、激しい運動や外傷との関連性は低いと云われています。

症状

症状は通常の場合、発生する部位によって、急性の四肢不全麻痺や、後肢不全麻痺・後肢麻痺などが確認されます。多くの症例では、発症直後以外で痛みを訴える様子は認められません。下側から押し上がる様に水和髄核が脱出するため、通常麻痺については左右差がないケースが殆どで、発症直後の症状は、かなり強く観察されます。

診断

MRIにより診断します。HNPEは「液体」に近い成分であるため、液状物の性状を正確に捉えるMRIが有効となります。画像診断では、矢状断面(サジタル断面)で均一に高輝度の椎間板による圧迫病変が観察され、押し出された椎間板物質は体軸断面(アキシャル像)で「seagull sign」と呼ばれる典型的な画像所見を示します。液状物による圧迫かどうかを確認するため、T2強調画像、T1強調画像を必ず確認することになります。

下の2症例の画像では、いずれも矢状断面像において脊髄腹側から白く盛り上がった圧迫物が可視化されています。体軸断面では圧迫された様相が精細に描出されています。この椎間板ヘルニアのタイプでは、通常T2強調画像で黒色〜灰色で描出される椎間板が、白く描出される特徴を持ちます。

水和髄核逸脱症(HNPE)の診断
水和髄核逸脱症(HNPE)の診断

治療

HNPEは一般的な椎間板ヘルニアとは異なり、内科治療、外科治療のいずれも比較的良好な経過を辿ると言われています。当院では、(1)発症時の重症度(グレード)、(2)水和髄核脱出による脊髄圧迫状況、(3)脱出に伴って影響する脊髄障害の程度、これら3点から外科治療、保存治療いずれかの選択肢を、その患者様の状況に合わせてご提案しています。

水和髄核逸脱症にあてはまる症状
前足もしくは後足、四肢の完全な麻痺
(通常では左右の不対称性は認められず、発症直後の症状は強く観察されます)
見た目ではあまり強く痛がる様子がない

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