症例で見る

5つの検査方法

靭帯断裂による、脛骨のゆるみを確認する

前十字靱帯が断裂していると、脛骨が正常よりも前方に出ることになります。検査では、脛骨の圧迫や膝の曲げ伸ばしなどを行い、異常を検出します。

触診検査

まずは歩き方を確認し、次に膝関節を触る触診検査を行います。触診検査では、次の3つが認められることを確認します。

・脛骨の前方引き出し徴候(膝が前に滑ってしまう:ドローワーサイン)
・脛骨の前方への突出(脛骨圧迫試験による)
・膝の過伸展での痛み兆候

その他にも、前十字靱帯損傷時には膝関節を伸ばした際に痛み(膝の伸展痛)が認められ、特に内側半月板を損傷している場合は、関節を屈曲した位置から伸展した時にクリック音が確認できることがあります。

また慢性経過をとった場合には、膝関節の内側の腫れ(バッドレスサイン)が生じたり、膝の問題で後ろ足を使用できない事による筋力低下(筋肉の不使用性萎縮)などがみられます。ただし、これらの検査は前十字靱帯が部分断裂している際には検出ができることが多いですが、前十字靱帯が部分断裂している場合にはわかりにくいことが少なくなく、注意が必要です。

お座りテスト

お座りをさせて、通常のお座りができるかどうかを診るテストです。前十字靭帯断裂が生じている場合には、足先が少し外(または内)を向いた状態でお座りをするようになります。場合によってはお姉さん座りやあぐらをしているようにも見えます。これは、関節内で炎症が生じている場合には膝を曲げると痛みが発生するからです。このテストは「Sit Test」とも呼ばれます。

レントゲン(X線)検査

また、前十字靭帯損傷に伴い、関節内に炎症が生じ関節液の増加が認められます。その結果、膝関節内に存在する脂肪の圧迫像(ファットパットサイン)が生じます。また損傷が起き時間が経過しているものでは炎症の結果、関節炎が生じ大腿骨滑車稜、あるいは脛骨高平部の尾側、膝蓋骨遠位などに骨棘形成(関節炎)がみられます。

なお、レントゲン検査とは、X線を使って体内の様子を調べる検査です。この検査は胸部や腹部、骨など全身が対象となります。X線が透過しにくい骨などは白く写り、X線が透過しやすい空気などは黒く写ります。ファットパッドサインが確認ができるということは、正常時では平たく存在していた脂肪や軟部組織が、関節液や血腫などに圧迫され膨張していることを意味しています。

細胞診(関節液)検査

触診やX線検査で確定が困難なときや、他の疾患との鑑別をする際に、関節液の量や性状の変化を確認することが有効になります。細い針を用いて、関節液を吸引します。麻酔の必要はなく、身体への影響の少ない検査です。

細胞診(関節液)検査では、前十字靭帯断裂症例において特徴的な所見を示すことはありませんが、症状の似た他の膝関節疾患と鑑別に役立ちます。特に自己免疫によって自身の細胞が破壊されてしまうリウマチ様関節炎との区別に有益です。実際には関節液の量や粘調性、色調、細胞成分などを評価します。

参考:関節炎の種類

関節炎には主に3つの種類に分けることができ、細胞診(関節液)検査はこれらの種類の判断に役立ちます。各関節炎の原因が異なることから、治療方法も異なります。

1、変性性関節炎
2、リウマチ様関節炎
3、感染性関節炎

1、変性性関節炎

変性性関節炎は、年齢や体重、骨の形などが原因と考えられ、徐々に靱帯の構造に変化が生じ、その結果、靱帯が弱くなってしまうものです。何か明確な細菌等が原因であるわけではないため、細胞診(関節液)検査を行なっても、特定の細菌などが検出されるわけではありません。つまり、他の関節炎ではないと判断できることにより、変性性関節炎である、と判断ができるのです。全十字靭帯断裂が確認される際には、この変性性関節炎も同時に確認されることが多いです。

2、リウマチ様関節炎

リウマチ様関節は、自己の免疫が原因で生じます。本来免疫とは体内に侵入したウイルスを排除するための機能ですが、リウマチ様関節炎では、この免疫機能が正常に働かず、自分を攻撃し、炎症を起こすようになります。炎症は滑膜組織から始まり、次第に軟骨や骨に影響が及ぶようになります。

リウマチ様関節炎の場合、細胞診(関節液)検査では、関節液中に好中球という炎症細胞が出ます。また、CRP(犬C反応性蛋白…体のなかで炎症が起きているいるときに血液中で上昇するタンパク質)検査と合わせて診断することが多いです。

なお、リウマチ様関節炎は免疫介在性関節炎に分類されます。骨病変が認められる場合は関節リウマチに、基礎疾患(感染症、胃腸炎、腫瘍など)に付随して起こる場合には反応性多発性関節炎に分類されます。

3、感染性関節炎

細菌やウイルス、真菌などが血流を介して、または近くの感染部位から関節に入り引き起こすものです。病原菌が怪我により侵入したり、他の組織から運ばれたりすることが原因と考えられています。

関節鏡検査

関節鏡(カメラ)とは、関節の中を検査するための内視鏡(硬性鏡)です。高倍率で関節内を観察できるため、肉眼での膝関節内の精査よりも膝関節内の前十字靭帯の状態や関節軟骨の状態、半月板の損傷程度を詳細に把握することができます。 全身麻酔下にて実施します。

整形外科の手術ではレントゲンやCT、MRIなどの画像診断装置が用いられることも少なくありませんが、関節鏡では実際に患部の状態を目で見て確認できるため、正確な現状把握が可能となります。関節鏡検査では実際に大きくメスを入れて患部を開く必要がないため、身体への影響が少ないことが特徴です。身体への影響が少ないと、術後の早い回復を望めます。

ONE for Animalsグループ

Group OF ONE for Animals

  • ONE
    どうぶつ整形外科センター東京

    東京で唯一のONE for Animalsグループです。院内にはCTを整え、千葉院と連携を取りながら治療にあたっています。

    東京都港区芝2丁目29-12-1F

    TEL:03-6453-9014 
    院長:中條 哲也

  • ONE自由が丘
    どうぶつ整形外科・リハビリセンター

    リハビリ専門の獣医師(CCRP保有)がセンター長を務める、プール付きのリハビリ特化型施設です。早期回復のサポートを行います。

    東京都目黒区柿の木坂1-16-8

    TEL:03-6459-5914 
    センター長:岸 陽子

  • ONE横浜どうぶつ整形外科センター

    横浜スタジアム傍のCTを備えたセンター。手術を日々実施しており、手術までの日数が短いのが特徴です。

    神奈川県横浜市中区太田町1丁目7−1

    TEL:045-305-4014 
    センター長:森 淳和

pagetop

飼い主様へ 獣医師様へ