症例で見る

椎間板ヘルニア

CASE 01

椎間板ヘルニアは、脊椎の椎骨の間にある椎間板というクッションが飛び出して(膨れて)脊髄という神経を圧迫し、神経に異常を生じる疾患です。痛みやふらつきうまく歩けない足を全く動かせない、おっしっこを漏らしてしまう(排尿障害)といった神経麻痺の症状が生じます。症状が軽度な場合は内科治療で対応することもありますが、神経麻痺が強い場合には外科的治療(手術)が必要です。

椎間板ヘルニアとは

脊椎の椎骨の間にある椎間板というクッションが飛び出し、脊髄を圧迫し、神経に異常が生じる疾患です。椎間板ヘルニアには種類が2つあります。椎間板を構成する成分のうちどの部分が飛び出たかによってタイプ分類をすることができます。

A:ハンセンI型
B:ハンセンII型

椎間板ヘルニアの分類

椎間板ヘルニアには大きく分けてハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分類されます。ハンセンⅠ型については、軟骨異栄養犬種といわれる特定の犬種に多く見られます。軟骨異栄養犬種では椎間板を構成する軟骨に若いうちから石灰化(変性)が生じ、椎間板ヘルニアが起こりやすくなるとされています。ダックスフンドやパグ、ペキニーズ、ウェルシュコーギー、ウィペット、パピヨン、トイ・プードルなどに発生が多く認められます。ハンセンⅠ型は急性発症が多く、予兆なく突然の麻痺や痛みが生じることが多いです。ハンセンⅡ型は人と同じように椎間板の外側の繊維輪が肥厚し徐々に脊髄を圧迫する病態です。

椎間板ヘルニアの症状

軽度の椎間板ヘルニアでは痛みや違和感が生じます。動物は言葉を話せないため、痛みや違和感といった症状は、日常の動きを確認することでわかることが多いです。例えば腰痛がある場合には、人と同じように歩きたくないので部屋の隅で丸まっている・腰を丸めて歩く・腰部の筋緊張(お腹が張っている)などの症状が認められます。神経麻痺の程度が進行すると、ふらついてうまく歩けない、足を全く動かせない、おっしっこを漏らしてしまう(排尿障害)といった麻痺の症状が生じます。椎間板ヘルニアで脊髄の神経にどの程度、圧迫が生じているかによって、症状の程度は変わってきます。

またどの部分に椎間板ヘルニアが生じたかによって前足と後足どちらに症状が出るかが決まってきます。頚部椎間板ヘルニアの場合(首の椎間板ヘルニア)には首の部分の激痛や前足と後足に麻痺が生じたり、歩くときに前につんのめってしまう、横たわって歩くことができないなどの症状が見られることが多いです。胸腰部の椎間板ヘルニアの場合(胸や腰の部分の椎間板ヘルニア)には後足が動かないといった症状が出る事が特徴です。胸や腰の部分を触ると痛がったり、後足を突っ張ってしまい曲げることができない、後足に力が入らない、腰をあげることができないなどの症状が見られることが多いです。

下記の「椎間板ヘルニアの症状」ページでは、当院で動画撮影した実際のワンちゃんの様子をご覧いただけます。

状態別の5つのグレード

胸腰部の椎間板ヘルニアの麻痺の程度はⅠからⅤのグレードに分けて分類する事が多いです。頚部の評価はまた別の指標があります。

グレードⅠ:腰を丸めて痛そうにしている。動きが悪い。
グレードⅡ:酔っぱらったようにふらふら歩く。歩く時に爪を擦っている(ナックリング)。
グレードⅢ:後ろ足を動かす事ができない。腰をあげることができない
グレードⅣ:足先の皮膚をつねっても痛みを感じない。
グレードⅤ:足先の骨をつねっても痛みを感じない。

神経麻痺が重度になってくると(グレードⅣ以上)排尿障害も生じてきます。下記の「状態別の5つのグレード」ページでは、当院で動画撮影した実際のワンちゃんの様子を、グレード別にご覧いただけます。

進行性脊髄軟化症

グレード4ならびに5(多くの報告ではグレード5)の10%前後で、「進行性脊髄軟化症」という致死的な病態へと進行すると報告されています。※進行性脊髄軟化症とは…脊髄の病変が広がる事により、進行性に脊髄が死んでしまう状態です。一度発症すると72時間以内に急速に進行し、最終的には呼吸をするための神経も麻痺するため、呼吸ができずに亡くなることがほとんどです。進行性脊髄軟化症を発症してしまった場合、神経麻痺が徐々に悪化していき、最終的には呼吸不全でなくなってしまう事がほとんどです。

椎間板ヘルニアの診断・検査方法

犬の椎間板ヘルニアの治療のための診断を行うためには特殊な画像検査が必要です。椎間板ヘルニアが疑われる症例の検査は、その目的によって大きく下記の4つに分けられます。椎間板ヘルニアを診断する為の検査にはCTなやMRIが必要です。CTやMRIのある施設であると検査・治療が一度で済み、飼い主様ならびにワンちゃんへの負担が減ります。(CTもしくはMRI装置が無い施設では、検査センターでの麻酔と手術の為の麻酔と、複数回の麻酔が必要となり、身体や移動の負担がかかります。当院では両方を完備しています。)

・スクリーニング検査
・神経学的検査
・CT検査
・MRI検査

手術方法(外科的治療)

圧迫物質を取り除く外科手術を行います。一般的には中程度〜重度の麻痺がみられる場合に手術を行います。軽度の麻痺の場合にも症状が持続し改善がない場合、脊髄が重度に圧迫されている場合を減圧するために手術の適用となることもあります。脊髄の圧迫を取り除くことで、早期の機能回復を目指す方法です。神経麻痺がGradeⅢ/Ⅴ以上で重度な場合や、GradeⅠ-Ⅱ/Ⅴでも内科治療に反応しない椎間板ヘルニアに対して適応となります。

手術方法は胸腰部では片側椎弓切除術が多く用いられ、頸部ではベントラルスロット術が用いられます。複数箇所に椎間板ヘルニアが存在する場合には椎体固定が必要になる場合もあります。

内科的療法(温存/保存療法)

激しい運動や負担のかかる衝撃を抑えることで、椎間板物質のさらなる突出を防ぎ、時間経過による脊髄機能の損傷の修復することを目指す療法です。椎間板の再脱出を腹ぐ目安として、約8週間の安静期間が必要とされています。歩行が可能な、軽度の神経麻痺の場合に適応となりますが、麻痺が重度な場合には外科治療が適応となります。一般的に用いられるのは一定期間ワンちゃんをケージから出さず、運動量を減らす方法(ケージレスト)です。

最近では動物用のコルセットも開発されており、保存療法の一助となることがあります。コルセットは締め付けるといったイメージを持つ方が多いですが、腰の安定化を図るのに有益です。コルセットを着用していれば必ずしも回復が期待できる、というわけではありませんが、安静の難しいような性格の子や仕事や外出などで見ていられない時の補助器具として使用することが可能です。

リハビリ方法

リハビリは、外科治療が終わり脊髄圧迫が解除されたのち(術後2日目)、内科治療が良好に経過しているときに実施します。椎間板ヘルニアによる神経麻痺で筋肉量が低下したり(足が細くなったり)、体幹(体の軸)がずれていたり、前足や後足の動きを良化させるために実施します。人と同様にリハビリを行うことで早期の機能回復を目指します。

リハビリ方法には、マッサージ、筋量増加訓練や水中トレッドミル(水の中で行うウォーキングマシーン)、大型プールなどが挙げられます。ただやみくもに歩かせるのではなく、身体への負担を少なくし、やる気をそがない取り組みが必要です。近年はリハビリに力を入れている動物病院も増えているため、リハビリまでを見据えた動物病院探しを行うことも重要です。当院でもそうですが、整形外科専門の動物病院ではトレッドミルやプールを用意し、効果的なリハビリを行うところもあります。

当院にはリハビリ専門の獣医師が在籍しています。獣医療先進国であるアメリカのテネシー大学が提供する犬の理学リハビリテーションプログラム(CCRP)を受講しており、獣医師としての知見を活かしリハビリに当たっています。また、人間の理学療法士資格および動物看護師資格を保有したスタッフも在籍しています。そのスタッフは理学療法についてのセミナーを多数行っており、人と動物の身体の違いを理解したうえで、効果的なリハビリを検討します。整形外科専門病院だからこそ、リバビリにも専門の人材が担当いたします。

下記の「リハビリ」ページでは、当院で動画撮影した実際のリハビリの様子をご覧いただけます。

入院期間と入院中の過ごし方

入院期間ははそのワンちゃんの症状に合わせて判断します。入院内には前述のリハビリを毎日行うほか、歩ける状態の子は毎日当院併設のドッグランで散歩を行います。入院期間中は毎日リハビリを行うほか、天気の日には当院併設のドッグランで1日2〜3回ほど歩く練習を行うようにしています。入院期間中はワンちゃんに「機嫌良く」過ごせてもらえるよう、1日に預かる入院患者数を制限しているほか、ワンちゃんに頻繁に声をかけ、安心できる環境を整えています。ワンちゃんの機嫌はリハビリの運動の効果に大きく貢献します。

椎間板ヘルニアに対する整復手術前後動画

  •  椎間板ヘルニアに対する整復手術前後動画

  •  椎間板ヘルニアに対する整復手術前後動画

  •  椎間板ヘルニアに対する整復手術前後動画

当院での治療について

当院での治療は動物病院様からのご紹介の他に、飼い主様からご連絡も承っています。他の病院で検査データなどがありましたらご持参ください。

まずは当院へお電話にてご連絡ください。
(電話番号:047-408-9014。 受付時間:9:00〜17:00。)

当院グループの2010年〜2019年までの椎間板ヘルニア手術実績1300件以上の実績があります。

整形外科・神経外科特化型病院だからこそ、CTやMRIを活用し、精緻な手術、より身体への負担の少ない手術を目指します。当院獣医師が専門外来として訪問させていただいているかかりつけ病院からは手術のスピードが早く、正確な手術であるとと評価をいただいてます。

ONE for Animalsグループ

Group OF ONE for Animals

  • ONE
    どうぶつ整形外科センター東京

    東京で唯一のONE for Animalsグループです。院内にはCTを整え、千葉院と連携を取りながら治療にあたっています。

    東京都港区芝2丁目29-12-1F

    TEL:03-6453-9014 
    院長:中條 哲也

  • ONE自由が丘
    どうぶつ整形外科・リハビリセンター

    リハビリ専門の獣医師(CCRP保有)がセンター長を務める、プール付きのリハビリ特化型施設です。早期回復のサポートを行います。

    東京都目黒区柿の木坂1-16-8

    TEL:03-6459-5914 
    センター長:岸 陽子

  • ONE横浜どうぶつ整形外科センター

    横浜スタジアム傍のCTを備えたセンター。手術を日々実施しており、手術までの日数が短いのが特徴です。

    神奈川県横浜市中区太田町1丁目7−1

    TEL:045-305-4014 
    センター長:森 淳和

pagetop

飼い主様へ 獣医師様へ