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特発性脊髄炎(非感染性脊髄炎)

概要

特発性脊髄炎とは、犬の非化膿性(非感染性)の炎症疾患を示します。その代表としては、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)やステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(SRMA)が挙げられます。いずれも免疫介在性など考えられていますが、明確な原因は不明です。主にステロイド剤を用いた内科治療が中心となります。ここでは、GMEやSRMAなどの非化膿性(非感染性)の炎症性疾患の概要を解説します。

病因

GMEは主に小型〜中型犬で多く見られますが、犬種特異性はありません。発症年齢は数ヶ月齢〜8歳程度で観察されます。一方、SRMAはビーグル、バーニーズマウンテンドッグなどの若い個体で好発すると言われていますが、その他の犬種でも報告されています。GME・SRMAいずれも、多くの症例で、ステロイド剤による緩和が得られることから、免疫介在性などの可能性が考えられていますが、明確な原因は明らかとなっていません。

症状

炎症が引き起こされる障害の部位によって、様々な神経的異常が見られます。疫学的には、GMEは脊髄病変が頚部に好発するため、首の痛みや前足や四肢の不全麻痺などが現れることが多いです。脊髄病変が胸腰部の場合には、腰背部痛や後肢不全麻痺などが観察されます。また、脳病変を合併していることもあり、発作、運動失調、視力障害や斜頚、眼振など、脳炎に関連した症状が同時に認められることがあります。

SRMAは、主に発熱や頚部痛、腰背部痛などが見られます。SRMAでは免疫介在性多発性関節炎と合併した状況で確認されることもあり、関節部分の熱感なども認められるケースもあります。SRMAは全身的問題となるケースも多く、不明熱の原因であることも多々あります。

診断

GME/SRMAは共に脊髄病変であり、MRIでの病巣可視化と脳脊髄液(CSF)検査が中心となります。MRIを用いた画像診断では、GMEについては病変形成の可視化が比較的明確です。特発性脊髄炎では図の様に、複数の病巣がT2強調画像で可視化されます。脊髄実質や髄膜が、造影T1強調画像で増強効果を示すことがあります(症例1)。ただし、SRMAは病状の程度によって画像では分かりにくいケースもあり、この様な場合には、CSF検査で細胞数増加が得られるかを組み合わせていくことで診断します。

下の症例においては、症例1では造影T2強調画像で不均一な高信号を認め、造影T1強調画像で造影増強効果が認められました。また、こちらの画像以外から脳幹部にも類似病巣が同時に観察されました。CSF検査でも明らかな細胞増加が認められ、特発性脊髄炎と診断されました。症例2では、T1強調画像と造影T1強調画像の比較で髄膜造影増強効果が観察されています。CSF検査では症例1と同様に細胞増多が確認されました。

特発性脊髄炎(非感染性脊髄炎)の診断

治療

特発性脊髄炎はいずれも、特発性脳炎(MUO)と同様にステロイドを中心とした内科治療が中心となります。治療反応については個体差がありますが、GME、SRMAいずれも比較的長期の投薬処方が必要となるケースが多く、継続投薬の中でも再発するケースもあります。

特発性脊髄炎にあてはまる症状
首の痛み
前足もしくは後足、四肢のふらつき(歩幅がおかしくなる)
ひきつけ(発作)
元気、食欲が落ちる
物にぶつかる
頭がかたむく
震える
ぐるぐる回ってしまう
    特発性脊髄炎を発症しやすい犬種
    数ヵ月齢〜8歳程度の小型〜中型犬、ビーグル、バーニーズマウンテンドッグなど(様々な犬種で発症する可能性があります)

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